DJI Matrice 4T(M4T)の赤外線画像をFLIR形式に変換する完全ガイド

DJI Matrice 4T(M4T)のサーマルR-JPEGをFLIR Tools / Pix4DmapperなどFLIR系ツールで扱う方法を、実機データによる精度検証と手順込みで解説。M30Tからの移行ポイントも整理しました。

技術解説M4TMatrice 4TDJI変換

2025 年に登場した DJI Matrice 4T(以下 M4T)は、M30T からの移行先として検討されることが多いコンパクト点検機です。本記事では、M4T が出力するサーマル R-JPEG を FLIR Tools や Pix4Dmapper などで扱えるフォーマットへ変換する手順と、実機データを用いた精度検証結果をまとめます。

CRITIR Convert の開発・運用元である ASOLAB. が実際に M4T で撮影した画像を変換した結果を載せていますので、これから M4T を導入する点検業者・調査会社の方は数値を参考にしてください。

この記事の要点

  • M4T のサーマル R-JPEG は DJI 独自フォーマット で、FLIR Tools や Pix4Dmapper でそのまま開いても温度値は読めません(M30T と同じ事情)
  • 解決策は 2 つ:FLIR 互換 R-JPEG に変換(FLIR Tools / Thermal Studio 用)、または float32 TIFF に変換(Pix4Dmapper / Metashape 用)
  • 精度:DJI Thermal SDK ベースの変換で、TIFF は 誤差ゼロ(完全一致)、FLIR R-JPEG でも 平均誤差 0.001 °C 未満・最大 0.002 °C に収まります(実機データは後述)
  • M30T からの違い:サーマル解像度(640×512)・データ構造は M30T と同等。ただし超解像設定や表示用 JPEG の扱いにより、JPG ヘッダ上の画像サイズが 640×512 以外になる場合があります
  • 推奨ツール:バッチ変換であれば CRITIR Convert、変換せず直接解析したい場合は姉妹アプリの CRITIR

DJI Matrice 4T(M4T)とは

M4T は 2025 年 1 月に発表された DJI Matrice 4 シリーズの 1 機種で、点検・調査用途に特化したサーマル+ズーム搭載モデルです。同シリーズの兄弟機 M4E が広域マッピング向けなのに対し、M4T は 赤外線・可視・レーザー距離計を統合したペイロード を 1 機に搭載し、点検現場での運用を想定しています。

DJI Matrice 4T(M4T)の機体外観。折りたたみ式のクワッドコプター本体に、赤外線・可視・レーザー距離計を統合したジンバルペイロードが搭載されている

主な仕様(サーマル関連):

項目スペック
サーマルセンサー解像度640×512
サーマル感度(NETD)≤ 50 mK @ f/1.0
温度測定範囲-20 °C 〜 +150 °C(高ゲイン)/ 0 °C 〜 +550 °C(低ゲイン)
出力形式DJI 仕様の R-JPEG(放射温度測定対応)
ファイル拡張子.JPG
メタデータ識別子Model=M4T(EXIF / DJI XMP)

折りたたみ式の機体設計と、M30T と比べた可搬性の向上が運用面の大きな魅力です。一方でデータ形式の観点からは、サーマル側は M30T の延長線上にあるフォーマット で、独自の R-JPEG コンテナを採用しています。

M4T のサーマル R-JPEG の中身

M4T が出力する .JPG は、見た目はただの JPEG ですが、APP マーカー領域に独自のサーマル情報が埋め込まれています。

M4Tの赤外線R-JPEGに含まれる2種類のデータを並べたイメージ。左は640×512のサーマル生データ(レインボー擬似カラーで可視化)、右は同一フレームの可視光画像。点検現場の工具・防具を撮影した1ファイルの中に、温度配列と可視画像の両方が格納されている

ブロック内容
画像サイズ(JPG ヘッダ)1280×1024(超解像オン時)/ 640×512(超解像オフ時)
サーマル生データ640×512 の 16bit 整数(センサーネイティブ解像度)
メタデータ放射率 / 反射温度 / 大気温度 / 湿度 / 撮影距離(撮影時に設定した値)
カメラ情報Model=M4T、ジンバル姿勢、レンズ情報
GPS / 時刻緯度・経度・高度・撮影日時(UTC + ローカル)

ファイル名は DJI_<日時>_<連番>_T.JPG の規則で、末尾の _T がサーマル画像を表します(同フライト中に撮影されたペアの可視画像は _V または _W 接尾子)。

問題は、この DJI 独自の APP1 マーカー構造は FLIR の FFF(FLIR File Format)とは別物 だという点です。FLIR Tools / Thermal Studio は FFF を探しに行くため、M4T の R-JPEG を直接開いても可視画像しか表示できず、温度値は失われます。

M30T から M4T への変化(データ形式の観点)

「M30T 用のワークフローはそのまま使えるか?」という観点でまとめます。

観点M30TM4Tデータ的な意味
サーマル解像度640×512640×512同じ。SDK の読み出しコードもそのまま動く
ファイル拡張子.JPG(R-JPEG).JPG(R-JPEG)同じ
EXIF ModelM30TM4T異なる。機種判定・統計集計の際に注意
Planck 定数機体個体ごとに格納機体個体ごとに格納同じ方式
メタデータパラメータ放射率 / 反射温度 等放射率 / 反射温度 等同じ
JPG ヘッダの画像サイズ640×512640×512 または 1280×1024M4T は超解像設定により JPG ヘッダ上のサイズが変わる

結論として、M30T 用の変換ワークフローは M4T にもそのまま流用可能 です。CRITIR Convert は内部で Model 値を見て分岐していますが、利用者から見ると操作手順は M30T と完全に同じです。

M4T → FLIR R-JPEG 変換手順

FLIR Tools / FLIR Thermal Studio で開けるようにする手順です。CRITIR Convert を例に説明しますが、原理は他の変換ソフトでも同様です。

  1. CRITIR Convert を起動する
  2. ソースフォルダー に DJI Pilot 2 から取り出した M4T の撮影フォルダをドラッグ&ドロップ。サブフォルダ含めサーマル R-JPEG(*_T.JPG)が自動抽出される
  3. 出力フォーマットJPG(FLIR互換) を選択
    • 解析用 TIFF も並行で出したい場合は JPG + TIFF(両方保存) を選択
  4. 出力フォルダー に書き出し先を指定(元フォルダは変更されない)
  5. 変換開始 を押下。1 ファイルあたり数百ミリ秒、100 枚規模なら 1〜2 分で完了
  6. 完了後、出力 R-JPEG を FLIR Tools または FLIR Thermal Studio で開く。スポット・エリア・ライン測定 が温度値を返すことを確認

撮影パラメータ(放射率・反射温度・大気温度・湿度・撮影距離)は、撮影時に DJI Pilot 2 で設定した値がそのまま FLIR 側に引き継がれます。FLIR Tools 側でこれらを再設定する必要はありません。

M4T → TIFF 変換手順(Pix4Dmapper / Metashape 向け)

赤外線オルソ画像を生成したい場合は、float32 TIFF が最適です。

  1. CRITIR Convert の 出力フォーマットTIFF(解析用) に変更(JPG も同時出力したい場合は JPG + TIFF(両方保存))
  2. 変換開始。1 枚あたり 640×512 px の単チャンネル float32 TIFF が出力され、ピクセル値は 摂氏温度値そのもの
  3. Pix4Dmapper で読み込む場合:
    • 新規プロジェクト作成時にテンプレート Thermal Camera を選択
    • TIFF が入ったフォルダを追加
    • EXIF から GPS とカメラ情報が自動で読まれる
    • Initial Processing → Point Cloud → DSM / Orthomosaic and Index の順で処理
    • 完成したオルソは GeoTIFF として書き出して QGIS や ArcGIS で利用可能
  4. Agisoft Metashape で読み込む場合:

Pix4D / Metashape の入力としては M30T 用のテンプレートをそのまま使用できます。M4T 専用テンプレートを新規に作る必要はありません。

実際にできあがるオルソ画像

変換した TIFF を Metashape に通すと、ピクセル値が摂氏温度のまま保持された単一バンドのラスター画像が得られます。任意のカラーパレットで可視化したり、画素単位で温度を計測したり、GeoTIFF として QGIS / ArcGIS に渡したりできます。同じ TIFF + Metashape パイプラインで実際に出力したオルソ画像の例:

CRITIR Convertで変換したTIFFをAgisoft Metashapeに通して生成した赤外線オルソ画像。レインボーカラーマップで温度差を可視化し、ピクセル値は摂氏温度値として保持されているため下流での測定にそのまま利用できる

写真のアライメント・ポイントクラウド・DEM・オルソモザイク生成・単バンドラスター書き出しまでの詳細手順は「DJI 赤外線画像から Metashape で赤外線オルソ画像を作る完全手順」 を参照してください。

精度検証:実機データ

実際に M4T で撮影した R-JPEG を CRITIR Convert で変換した結果が以下です。

CRITIR Convertの変換結果検証画面。M4T の R-JPEG を変換し、TIFF は誤差ゼロ、FLIR R-JPEG は平均誤差 0.000995°C・最大誤差 0.002321°C に収まっていることを示す

検証ファイル DJI_20260106130314_0004_T.JPG(温度域 62.3 °C 〜 76.1 °C)の主な結果:

出力形式平均誤差最大誤差解像度
TIFF(float32)0.000000 °C0.000000 °C640×512
FLIR R-JPEG0.000995 °C0.002321 °C640×512(FLIR Raw)

ポイント:

  • TIFF はビット完全一致。DJI SDK が読み出した温度配列をそのまま float32 で書き出すため、ピクセル値の往復誤差は文字通りゼロ
  • FLIR R-JPEG への誤差は 16bit Raw + Planck 再エンコードに由来。最大誤差 0.002 °C は、M4T のセンサー感度(NETD ≤ 50 mK = 0.05 °C)の 約 1/20 に相当し、実用上は無視できる範囲
  • GPS は緯度・経度・高度ともそのまま継承(検証時:lat=37.15568183, lon=138.24757525, alt=15.58)
  • EXIF の Make / Model も保持(Make=DJI, Model=M4T がそのまま FLIR 側に渡る)

報告書で温度差を 0.1 °C 単位で扱う実務上、この変換誤差レベルが問題になるケースはまずありません。

M4T 固有の注意点

実運用で引っかかりやすいポイントをいくつか:

  • ファイル拡張子は _T.JPG:M4T のサーマルファイルはサフィックス _T を持ちます。同フォルダに _V(可視ワイド)/ _Z(ズーム)/ _W(広角)などの可視ファイルが混在していることが多いため、変換対象がサーマルのみであることを確認(CRITIR Convert は自動でサーマルを抽出します)
  • ペア可視画像は変換されない:可視 JPG は変換対象外。可視画像と赤外線画像を 重ね合わせて解析したい 場合は、変換不要で両方を読み込める姉妹アプリ CRITIR を検討してください
  • JPG ヘッダ上のサイズ ≠ サーマルセンサー解像度:M4T の超解像をオンにすると JPG ヘッダ上のサイズが 1280×1024 になりますが、SDK が読み出すサーマル本体は 640×512(センサーネイティブ)です。変換ソフトのログで両方の数値が出ても混乱しないように
  • 動画(MP4)の変換は対象外:M4T はサーマル動画も撮影できますが、CRITIR Convert は静止画 R-JPEG のみ対応

「変換せずに解析する」という選択肢

ここまで M4T → FLIR R-JPEG / TIFF への変換を前提に説明してきました。CRITIR Convert の精度や運用性は実用十分ですが、そもそも「変換」自体は業務上のひと手間 であることに変わりはありません。

「変換せずに、DJI 画像をそのまま解析する」 — それを実現するのが姉妹アプリの CRITIR です。FLIR Tools / Thermal Studio とは別系統の解析環境ですが、ファイル取り込みから報告書出力までを 1 つのアプリで完結 できます。

CRITIRの解析画面イメージ。DJIサーマル画像を変換不要で読み込み、壁面オルソ画像生成・測定・報告書作成までを1つのアプリで実行している様子

CRITIR で実現できること

機能内容
DJI 画像の直接読み込みM4T を含む DJI R-JPEG をそのまま解析。変換工程ゼロ
FLIR / HIKMICRO もサポート既存の FLIR データセットも同じアプリで解析可能
可視画像との組み合わせ解析サーマル + 可視を並べて表示、測定結果は両画像に同時投影
赤外線オルソ画像の自動生成Pix4Dmapper / Metashape を介さずに、CRITIR 内で完結
報告書テンプレートPDF / Word / Excel / DXF 形式で出力。テンプレートビルダーで独自レイアウトも作成可
測定の自動投影1 つの測定点が、関連する全画像とオルソ画像に自動的に再投影される

CRITIR Convert と CRITIR の使い分け

ニーズ推奨ツール
FLIR Tools / Thermal Studio を使い続けたいCRITIR Convert
Pix4Dmapper / Metashape での赤外線オルソ生成を継続したいCRITIR Convert
立面オルソや赤外線オルソを手軽に生成したいCRITIR
報告書作成まで 1 つのアプリで完結させたいCRITIR
可視画像と赤外線画像の重ね合わせ解析を業務で多用するCRITIR
大量データを定常的に処理する点検事業者であるCRITIR
まず軽く試したい / 単発の変換ニーズが多いCRITIR Convert

CRITIR が向くケース・向かないケース

CRITIR(変換不要)が向いているケース

  • 報告書作成までを社内で行っている点検会社・調査会社
  • DJI 機材を中心に運用しており、変換ステップの削減で工数を圧縮したい
  • 壁面オルソや赤外線オルソを業務的に多数生成している
  • 可視画像と赤外線画像を組み合わせた解析が多い

CRITIR Convert(変換ルート)が向いているケース

  • 既に FLIR Tools / Thermal Studio に習熟していて、解析環境を変えたくない
  • Pix4Dmapper / Metashape など既存ツール群との連携を維持したい
  • 単発のスポット変換が多く、統合解析環境までは不要
  • 月数十枚規模で、変換工数のインパクトが限定的

価格と導入

CRITIR は変換不要のオールインワンソフトウェアのため、CRITIR Convert より導入コストは高くなります(年間ライセンス)。料金体系の詳細は CRITIR の料金ページ で公開されています。

一方で、変換 + 解析 + 報告書作成を別ツールで運用する場合の総工数(人件費含む) と比較すると、現場規模が大きいほど CRITIR が効率的になる構造です。「年に何件の点検案件・何枚の処理を想定しているか」を起点に試算するのが現実的です。

具体的な見積もりやデモ・トライアルは お問い合わせフォーム からご相談ください。

FAQ

M30T で使っていた CRITIR Convert のライセンスはそのまま M4T でも使えますか?
はい、機種ごとのライセンス制限はありません。同じライセンスで M30T と M4T の両方を変換できます。
M4T のサーマル動画も変換できますか?
現時点では静止画 R-JPEG のみの対応です。動画は MP4 から静止画フレームを抽出した上での変換になります。
変換に失敗するファイルがあります。原因は?
主な原因は 3 つ:(1) ファイルが可視画像(_V/_W/_Z)で、サーマルではない、(2) 撮影中の中断などでファイルが破損している、(3) サポート対象外のファームウェアバージョン。3 は稀ですが、起きた場合はサンプルファイルを添えてお問い合わせください。
M4T で撮影した過去の案件をまとめて変換したいです。枚数制限はありますか?
CRITIR Convert にソフトウェア側の枚数上限はありません。フォルダごとドラッグ&ドロップで投入可能で、サブフォルダ構造はそのまま出力先に再現されます。
自分の環境で動くか試したい場合は?
14 日間のフリートライアルをご用意しています。お問い合わせフォーム から「フリートライアル」を選んでご依頼ください。サンプル変換のみのご相談も承ります。

M4T を含む対応機種一覧は 対応機種ページ、料金体系は 料金ページ をご確認ください。変換代行サービスも 1 プロジェクト 6,050 円(税込)から承っています。

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